これは私自身の後悔からもきています。
といっても、私が現役の時は、誰もそんなことを教えてくれる人なんていませんでした。
現役中は、自分がどうやってパフォーマンスを上げるのか、どうやって勝つのか、どうやって実力を高めて結果を出すのか。考えていたのはただそれだけ。
現役中に自分の引退後の人生を考えるなんて、思いつきもしませんでした。
私の場合、突然の引退勧告で、さすがにその時は頭が真っ白になったことを今でも覚えています。
引退後はその企業に残り、会社員として社業に従事しましたが、当時はスポーツしかやっていなかったという劣等感で苦しいことばかりでした。
その後15年間勤め続ける中で、スポーツ経験を活かし、徐々に成長度を加速させることができたのですが、アスリートの経験と、引退後、企業で働き続けた経験でわかったことがあります。
それは、スポーツを通じて得られる能力は沢山あり、社会で活かされるものだということです。
しかし残念ながら、現役中は結果に捉われすぎて、そのプロセスで得られる能力が備えられなかったり、自分に備わった数々の能力に気づけず、スポーツを終えた後は「スポーツしか取り柄がなかった自分からスポーツを取られたら、自分にはもう何もない」と自信を失ったり、自分で自分の価値を下げているアスリートが多いのも事実です。
実際私もそうでしたから。
このようなことをもっと早く知っていたら、引退してこんなに苦しい思いをすることもなかったかもしれないし、現役中にもっとその能力に目を向けられ伸ばせていただろうし、何よりも現役中にもっと結果が出たのではと思います。
第二の人生で、スポーツを通じて備えてきた能力、備えられる能力を活かせずにいるのは本当に勿体ないことです。
スポーツは人財育成です。
高い目標を掲げ、様々な困難を乗り越え、日々トレーニングに打ち込んだ経験と、その道のりで備わった数々の能力は、あなたにしかない、誰からも奪われることのない大きな財産です。
スポーツは結果が求められる世界ではありますが、現役中に結果だけに目を向けるのではなく、視野を広げ、スポーツで結果を出すゴールと、引退後の人生のゴールのWゴールを現役中から考えて取り組むと、現役中だけでなく、引退後も活躍の幅がますます広がることは、私の両方の経験から伝えられることです。
そして何よりも、そのような経験をしてきたアスリートは、社会や企業にとっても非常に貴重な人材であるということ。
実業団チームの選手であれば、現役中に備えた体力、メンタル、主体性、思考力、判断力、目標達成能力、実行力、決断力、行動力、リーダーシップは、引退後もその企業で間違いなく一番欲しいと思われる人材なのです。
そんなことを私の経験を踏まえ、これからのスポーツ選手に、そして実業団チームの関係者に伝えていければと思っています。
しかしそこには、やはり指導者やフロントの理解が求められます。
この時期、プロ選手の戦力外通告や、シーズンを終え、次の人生のことを考える時期でもあるかと思います。
多くのトップアスリートやスポーツに人生を賭けてきた人たちにとって、これから長い人生の道のりがもっと豊かで、スポーツ経験が活かせる、明るい未来に繋がることを心から願い、微力ながらコミュニケーションの分野でそこに少しでも貢献できればと思っています。